玄関扉を開けた瞬間息を呑んだ。目の前にはいつものちひろ。だけどいつものちひろとは違うように見えてしまう。

「いらっしゃい真琴」

初めて入った白亜の豪邸の玄関はわたしの部屋よりも広かった。

「靴はここで脱げばいいの?」

吹き抜けの玄関の床は白くその先の床を見ても白でどこまでが玄関なのかがわからない。

「ごめんねわかりにくいよね、この段差があるところまでが玄関だから」

あまりの白さと光沢で見えなかったけど、たしかにそこには低い段差があった。

玄関を上がるとなんの為のスペースなのかわからないとにかく広い空間があって、高さ2メートル以上はある白のオブジェがあり、その奥には横幅5メートルはある窓、その窓からは中庭が見え、窓の前にはソファーセットがある。

白のオブジェは曲線でできていて、よくわからないけれどなんかおしゃれなものだった。

この空間だけでも驚くのに、さらに目を引くのが入って右側の階段。

美しい曲線を描きながら登っていくそのエレガントな姿はもう階段というより1つの芸術作品のよう。

そんな素敵な階段があるのにエレベーターまで設置されていたから言葉を失った。

「真琴、とりあえずそこで話そう」

ちひろが指を差したのは正面の大きな窓の前。

ソファーに座ると中庭が一望でき、青々とした芝生でが一面に広がるそこには、涼しげな黄緑色の葉をつけたシンボルツリーが1本あり、高さのある花壇には緑色の植物がたくさん植えてある。

花などは一切なく、緑色だけで作られた空間はまるで自然の中にいるようだ。

「凄い家……だね」

つまらない言葉しか出てこなかった。もともと乏しい語彙力を更に奪い取る力がこの家にはあった。