「ちひろは一度も誰かをうちに連れてきたことがないんだ。それなのに真琴にお手伝いさんやってもらおうなんて、正直驚いた。アルバイトは真琴が希望するなら異論はないよ。ただとっても大変だと思う。僕の方からは前日のうちにどの時間を空けて欲しいかを伝えるよ」
「それ以外の時間に食事の準備とか掃除とかを済ませればいいってことだよね」
「そうだね。基本、朝は全員が朝食をとるわけじゃないから食べる人は自分で用意することになっているんだ。夏休みは昼にお弁当が必要な人もいるし家で食事をとるものもいる。夜は全員揃って食べるのが習慣になっている」
「部屋はどのくらいあるの?凄く広いのかなやっぱり」
「予備知識はあまり入れておかない方がいいね。変にいろいろわかっているとちひろが不思議に思うから」
「そうだね」

わたし達はまたしばらく月を眺めていた。

なにかを話すわけでもなくただ眺めていた。

それは心地のいい時間とは言えなかった。

わたしの頭の中では瑞樹への質問が浮かんでは消すを繰り返していた。

どの質問も不躾(ぶしつけ)でしかなかったから。