理斗君は自分の目標に向かって歩き出した。

わたしはそれをずっと待っていることしか考えていなかった。

だから辛かったんだ。

理斗君がわたしよりも平気そうなのは、目指すものがあるからなんだ。

離ればなれになって寂しい今よりももっと先に待っているカラフルな未来に向かって進んでいるから平気なんだ。

なんだ理斗君ずるいよ、自分ばっかり先に行って。

寂しいのは変わらない。

すでに会いたい。

でも、目指すものができた今、わたしはもう平気だ。

途中見つけた本屋に入ると絵の描き方が書かれた本を購入した。

暖かい風に背中を押され家に向かって歩くその足取りは軽い。

家の近くのバス停が見え、バスに乗るかこのまま歩いて帰るか迷っていると突然ちひろが飛び出してきた。

「真琴~会えないかと思ったよぉ」
「ちひろ、どうしてここに?」
「だって理斗が遠いところに行っちゃったから真琴大丈夫かなって」

わたしはちひろを抱きしめた。

「ありがとうちひろ」
「うん、でもなんか真琴元気そうだね」
「ちひろのおかげだよ」
「僕、役に立ったの?」
「うん」
「本当に?」
「本当に」

わたしとちひろは青空の下、久しぶりに一緒に歩いた。

「ねぇ真琴?」
「なに?」
「春の匂いがするねっ」
「そうだね」
「あのね真琴」
「ん?」
「僕、真琴と理斗のこと応援することにしたんだよ。だから僕と真琴は前とおんなじ」

暖かい春の風が髪の毛を揺らす。

わたし達は空を見上げた。

そこには青い空と白い雲が果てしなく広がっていた。



fin