「おはよう真琴さん」
「あっ岬さんおはよう」

靴を履き替え教室へ向かう。

わたし達はお互いを名前で呼び合うようになった。

学校を休んでいた岬さんが登校してきた日に、わたしは瑞樹と出会ってからのことを岬さんに話した。

岬さんは何度も目に涙を浮かべるけれど、決してそれを流すことはなかった。

終始笑顔で話を聞いていた。

話が終わったあと岬さんが、これからはお互いを下の名前で呼び合おうと言ってくれた。

わたし達は本当の友達になった。

「真琴さん、今日も放課後は理斗君と一緒にどこか行くの?」
「うん、新しくできた雑貨屋さんに行く約束してるよ」

来年の春には理斗君はアメリカに行ってしまう。

期間は2年。

わたしと理斗君は時間の許す限り一緒にいた。

「本当、毎日一緒だね」
「うん、でも来年の3月にはアメリカに行っちゃうから……あっごめん!」

もう瑞樹と会えない岬さんになに言ってんだろうわたし……。

謝るわたしに岬さんは首を横に振った。

「謝ることないって。だって」

足を止めると岬さんは廊下の窓から外を見る。

グランドの木も、サッカーのゴールネットも、美術室のカーテンも風で揺れている。

岬さんはにっこり笑うと言葉を続けた。

「瑞樹はいつだってすぐそばにいるって真琴さんが教えてくれたでしょ。おかげで寂しく感じなくなったんだよ。わたしはいつも瑞樹と一緒」

岬さんはわたしと腕を組んだ。

チャイムが鳴り、わたし達は腕を組んだまま走って教室へ向かった。