夜、理斗君の部屋に空いたお皿を取りに行くと、明日ちひろの誕生会をすることを伝え、部屋を出た。

朝まで電話を繋いでもらったあの日から、瑞樹の話はしていない。

理斗君もそのことには一切触れなかった。

キッチンで洗い物を済ませるとカウンターでスマホを見ているちひろに声を掛けた。

「ねぇちひろ?」
「な~に~」
「ちょっとここで待っていてくれる?」
「うん」

部屋にスケッチブックを取りに行って戻ってくるとわたしはちひろの隣に座った。

「あのね…」

話そうとした瞬間リビングのドアが開き、慌ただしく晴君が入ってきた。

「あれ?」

テレビの前のテーブルとソファーを確認する晴君にちひろが声を掛けた。

「どうしたの晴?」
「スマホなくした」
「えっ?鳴らしてみようか?」
「うん」

ちひろが晴君のスマホに電話を掛けると遠くからメロディーが聞こえてくる。

「洗面所じゃない?」
「あっ、そうかも」

晴君はドアも閉めずに走っていった。

「まったく~。ん?真琴そのスケッチブックなに?」
「あっ…うん、あのね聞いてほしい話があるの」
「なに?なんか怖い」

ちひろはカウンターの上に静かにスマホを置いた。