朝、服に着替えるとキッチンに向かう。

瑞樹がいなくなっても朝はやって来て、わたしは今日もご飯を作って掃除をする。

どんなに悲しくても、時間はわたしに合わせてはくれない。

コルクボードを確認して冷蔵庫を開けると昼食と夕食のメニューを考えた。

メニューが決まって準備に取り掛かろうとした瞬間ふと、なにか大切なことを忘れている気がしてカレンダーに目を向けた。

「あっ!」

思わず大きな声が出た。

明日は9月30日、ちひろの誕生日だ。

昼食の準備が終わり部屋に行くと、レシピノートを開き、オーナーから教えてもらったケーキの作り方を確認した。

夏休み中に1度だけ葵ちゃんと一緒に作ったこのレシピのチョコレートケーキはとても美味しくて、2人であっという間に完食してしまった。

ケーキは2つ作る。

ちひろの分と、瑞樹の分。

生クリームでの飾り付けは葵ちゃんの方が上手だったから任せることにしている。

レシピノートをテーブルの上に置くと、瑞樹のスケッチブックを手に取った。

今日、夕食が済んで後片付けが終わったらこのスケッチブックをちひろに渡そうと思う。