「可愛いし本当、絵が素敵。これ、部屋に飾るのにいいね」
「そう思って春夏秋冬バージョンも描いたの」
「こんな写真みたいな桜とか紅葉した木とか、ふわふわの手触りが伝わってくるようなクマ普通描けないよ」
「ねぇ真琴?」
「ん?」
「僕がいなくなったらちひろにそのスケッチブックを渡して欲しいんだ」

僕がいなくなったら───その言葉に呼吸が止まった。

わかってはいても、はっきりと口に出して言われてしまうと苦しくなる。

「その時はちひろに今日のことを言ってもいいの?あの話をしている時、瑞樹がいたんだよって」
「うん」
「これも、瑞樹から渡されるようにお願いされたって」
「うん」
「……わかった」

わたしは一旦スケッチブックを元の場所に戻した。

「真琴、そろそろ時間」
「うん。瑞樹、ローテンブルクの絵」
「うん」
「まだ完成してないよ」
「あと少しで描き終わるね」
「うん……」
「真琴、時間」

いつものように瑞樹がみんなの様子を見て戻ってくるとわたしは部屋に行った。