「すみません、静かにしてください……」

夏休みを目前に男子学級委員の相馬(そうま)君が転校することになり、急遽男子学級委員を決めることになった放課後。

わたしは黒板の前に立ち、緊張で震える声をなんとかコントロールしながらもう３度目となるその言葉を言った。

「すみません、静かにしてください……お願いします」

わたしの隣で相馬君は面倒臭そうな表情で窓の外に顔を向けている。

学級委員が決まったら職員室に来るようにと言って担任は教室を出ていった。

そして、このクラスの女子の学級委員はわたし。

「ねぇ相馬君、わたしじゃ言うこと聞いてもらえないみたい……相馬君に……お願いできないかな?」

相馬君は睨むようにわたしを見ると「渡辺、お前がやれ」そう言って教室を出て行ってしまった。

「えっ？俺？」

渡辺君が自分の顔を指さすと全員帰り支度を始めた。

「渡辺!学級委員当選おめでと～」

このクラスで一番に目立っている4人組の女子達が順番に渡辺君の頭をもみくしゃに撫でていく。

そんな中、不機嫌そうな顔でわたしを見る葉山理斗(はやまりと)君と目が合った。

えっ、なんか睨まれてる?なんで……?

理斗君はこのクラスで一番、いや、この学校一番女子人気が高い男子で、もちろん話したこともなければ目が合ったのだって今が初めてだ。

「いや、俺学級委員とか無理だし」
「大丈夫だって、お前は男子学級委員ってだけで面倒な仕事は全部あいつにやらせたらいいよ。
相馬だってそうしてたし」

4人組のリーダー的存在の綾音(あやね)さんがそう言ってわたしを見るとそこにいた全員の視線が一気に集中した。

「あの、それはちょっと…」

わたしの発言は綾音さんに遮られた。