「痛いって」
「お、お前、後ろ」

颯真は私の目では無く私の後ろに視線を向けたまま、声を震わせている。
振り返れば、そこには鹿島さんがにっこりと立っていた。

「見えるの?!」
「いや、見えるって言ってもかなり透明に近い。
でも不思議と顔とかしっかり判別できる。
なんだこれ、お前の守護霊か?」
「一応初めまして。
俺は鹿島渉。
五年前事故死した君たちの先輩だよ」

颯真は少し口を開けたまま完全に固まっている。
私の肩から颯真の手がずるりと滑り落ちた。
きっと頭も混乱しているだろう、無理も無い。

「どうして颯真の身体が借りられたんですか?」
「そりゃこの場合知世を助けるわけだからそうしたい者を・・・・・・。
うん、これ以上俺が言うのは野暮ってもんだ」

途中で理由を言わなくなった鹿島さんは笑っている。
きっとこの局内で私と繋がりが深いのは中学から一緒で仲の良い颯真だけだ。
なるほど、と納得していたら鹿島さんが哀れんだ目を何故か颯真に向けた。
颯真はまだ鹿島さんを凝視したまま。
鹿島さんが、

「でもよく彼じゃ無く俺が来たってわかったな」
「だって知世って呼んだじゃ無いですか。
颯真は私のこと、トモって呼ぶので」
「あーそういや知世の名前呼んだところ聞いたこと無いかも。失敗失敗」
「すげぇ、守護霊って話せるのか」

呆然としている颯真が呟くように言う。

「守護霊とかじゃないの。なんというか」
「地縛霊になってたところを知世に拾われてこうやってくっついてる訳」

そういうと颯真の前に鹿島さんはふわりと出てきて、両手を胸の前でだらりとおろすとうらめしやぁと声を出す。
ビクッと顔を強ばらせのけぞる颯真を見て、私は鹿島さんに悪ふざけは駄目ですと注意した。

「ちょっとまだこの世に未練があるみたいで成仏出来ないんだよ。
でもそんなに長く知世の側にいるわけじゃ無いし大目に見てくれ、複雑だろうけどさ」

鹿島さんは颯真に両手を合わせて言うと、颯真の眉間に皺が寄る。