透明な君と、約束を



鹿島さんには着替え以外と撮影に写り込む可能性を気をつけてくれれば、後は好きにしてて良いですよと伝えてある。
控え室には既に二人の女の子がいて、どうやら同年代のようだ。
挨拶をすると笑顔で答えてくれて、気さくな感じにほっとした。
中で対応しているメイクさんや衣装担当さんなどが説明してくれるのだが用意された衣装に驚いた。
いや、颯真達の衣装を考えると当然なのかも知れないが。
メイクなどをしてもらっていたら他の女の子達も来て合計女子は六名だとわかる。
どうやら颯真の言葉を考えると、各自のパートナーとして立ったりするのだろうか。

ドアがノックされスタッフに呼ばれて皆が向かった場所は、舞踏会でも出来そうな天井の高いホール。
真っ白な壁に高い石の柱が等間隔にあってまるで海外の城のようだ。
颯真達も集まっていて、スタッフも集まるその前に一人の男性が数歩歩み出てきた。

「今日の撮影は各メンバーとパートナーのシーンを先に撮ります。
音は後で合わせるので口パクは必要無し。
女性はあくまで後ろ姿か、肩から下などで、絶対に顔を出しません。
このCMで欲しいのは、彼らと手を繋ぎダンスする相手は自分かも知れないと視聴者に思わせること。
メンバーはその点を必ず意識して下さい。
順番に撮影していきますので、ではよろしくお願いします」

よろしくお願いします、とプロデューサーらしき人の言葉に皆返事をし、一気に皆が撮影モードに入る。
なるほど、私以外の女の子が身長も髪型も髪色もバラバラなのはそういう事だったんだ。
既にピリピリとしたスタッフさん達の雰囲気を感じるのに、それでもパートナーとして出演する彼女たちは楽しそうに過ごしていて、何だか経験値の違いを感じてしまう。
数名と話しをしたが、女優の卵や私のようにモデルをしている子もいた。
経験値、それだけじゃない、私はもっと堂々としていなくてはいけないのだろう。
偉そうと言うことでは無く謙虚ではあるべき。
だけど萎縮しているのは間違いで、どんな状況でも受け止められる余裕、そういうのがまだ私には足りていないのだ。