透明な君と、約束を


凹んでいたらスマートフォンに颯真から連絡が来て、怯えながら開く。
怒っている文面かと思いきや、

『マスコミ対応で数日学校休む。ノートよろしく』

という簡素な内容にホッとしつつ、スタンプがないので忙しい中打ったのか、怒っているのか判別がつきにくい。
私は急いで、ノートは任せて、そして遅くなったけれどおめでとう!寝てました、ごめんと送ると、すぐに泣いているスタンプだけ送られてきて私もひたすら土下座するスタンプを送った。
既読マークがついてホッとして顔を上げると、リサが手に顎を乗せじっと私を見ていた。

「工藤くん?」
「うん。しばらく来られないからノートよろしくって。
あとお祝いと謝罪も書いたら泣いてるスタンプ送ってこられた」
「彼は健気だな、ほんと」

リサの目はそう言いつつずっと私を批難している。
色々と申し訳ないし、リサの目が辛いので話題を変えようとしたらリサが、

「でもさ、学校の前、凄かったじゃない?
うちらは事情知ったけど当分工藤くん来ないのにあの状態続くんだろうなぁ。
いやここ数日はマスコミに出まくるだろうし悪化するかも」
「うわ、怖い。
今日ですら先生達総出で押し出してたもんね。久々見たわ、あんな光景」
「芸能クラスやらあるから、誰かテレビとかで騒がれる度にこういうのあるもんね。
工藤くんもそうなると忙しさもあってオンライン授業メインに早々なるのかな」

そっか、その可能性があるんだ。
毎日じゃ無くても颯真に会えない、それはかなり寂しい。
お互い好きな少年漫画の話題で盛り上がれる友人がいなくなってしまう。

「そういや先日エキストラの仕事あったじゃない?
颯真に伝えておいたら事務所の仲間と当日スルッと出てんの。
ドラマの制服姿で声かけられたときは驚き通り越して差の違いを見せつけられたわ。
こっちは棚ぼたのエキストラすらドキドキだったのに」

不満げに私が言えば、リサはほんと健気だとまたよく通る声で笑う。

「でね、一緒にいたエキストラの女子達から颯真と二人で話してたって突っ込まれて。
単に学校同じだからって説明したら、学校教えてとか言い出したんだ。
その中でも一人の女子が颯真の昔からのファンらしくて、彼のためにも親しくしない方が良いって注意されたんだよね、かなり怖かった」

リサ自身も似たような事を経験しているのでうんざりしたような顔になった。

「知世は工藤くんと親しいし、そのルックスでモデルなんだから他の女子とは違うやっかみくると思う。
その辺余計に注意しておくべきだよ」
「だよね。颯真はこれから余計大切な時期だし」
「いや、それもあるけどさ、前々からファンだった子からすれば有名になった事が嬉しい反面、自分だけの彼では無くなってしまったと嫌いになるパターンもあるのよ。
かわいさ余って憎さ百倍、ってやつ。
それだけファンの心理って暴走することもあるし、それが特定の子と仲良くしてたら標的はそっちに向きかねない。
知世自身、身辺気をつけてって話」
「わかった、まぁもう早々外で会わないとは思うけど。
颯真も忙しいだろうし、人気が凄くなれば余計会えなくなるんだろうなぁ」

寂しいなと呟けば、この天然小悪魔め、とリサに言われたと同時に教師が教室に入ってきた。