透明な君と、約束を



さてあと二日行けば土曜日と気合いを入れて登校すると、校門の前には女子の人だかり。
勝手に侵入されないようにか、門をいつもより狭く閉めてある。
教師達が必死に追い払おうとしているが、彼女たちは散っては集まってでいたちごっこの様相。
制服はうちの高校のものじゃなく色々な種類があるのだが、近辺だけの学校では無さそうで授業には間に合うのだろうかと心配になる。
何だか女の子達が色々手に紙袋や色々と持っているところを見ると、今日はいつも休んでいる有名な子が来る日なんだろうかと横目で見ながら、教師達の援護を受けて狭い門をくぐり抜けた。

教室には既にリサがいて、私が入ってくると手を振ってくる。

「ねぇ校門の騒ぎ何?」

リサに聞きながら机に鞄を置くと、リサは呆れた顔をした。

「あーやっぱ気付いてないんだ。
入ってくるときいつも通りだったからまさかとは思ったけど」
「何が?」
「工藤くん、新しいアイドルグループのメンバーに選ばれたんだよ!
昨夜はそのグループがネットのトレンド一位だったじゃない!」

初耳に驚いてスマートフォンを鞄から出す。
昨日は早めに寝てギリギリ起きたのでスマートフォンを見ている暇が無かった。
というか充電が上手く出来てなかったので、登校中にモバイルバッテリーと繋いで充電しながら来ていた。
慌ててスマートフォンを立ち上げて画面を見れば、颯真から連絡が何件か届いていて冷や汗が流れそうな気持ちで中を読む。
そこには、今夜九時に以下のサイトチェック!とか、見た?見てくれた?とか、既読つかないけれどまさかもう寝てるんじゃないだろうな、という最後は怒りを醸し出すスタンプと供に送られていて、思わずひえ、と声を出した。

「あー、工藤くん連絡してたんでしょ。
それを知世は今の今まで気付きもしなかったと。
カワイソー」

私はたまたま不運というかミスが連発してみたいな弁解をするけれど、リサの心底呆れたその目が痛い。
そう言えば先日も追い込みがとか、祝ってくれよとか言っていたことを思いだした。
普通は絶対漏らしてはならない情報だ。
それらしき事を匂わすことすら問題になる。
それだけ私を信用して嬉しい気持ちを伝えたかったのかと思うと、余計に申し訳ない。

「どうしよ。
昨日は疲れて早く寝ちゃったし朝も寝坊してスマートフォン見る時間なかったし充電切れてたし。
怒ってるよね」
「どんだけピンポイントで早寝して充電ミスってるんだか。
怒ってるっていうよりむなしくなってるんじゃない?」
「そうだよね。付き合いの長い友達には祝って欲しいのに。
あんなに頑張っていたんだし申し訳ないことしちゃった」

努力していたことが実ったのだ。
心から嬉しくてその喜びを分かち合って欲しかっただろう。
私だって逆の立場なら一緒に祝って欲しいし、お祝いすべきだった。
はぁ、と大きなため息をつけばこちらを向いているリサの顔がなんとも言えない表情をしている。

「私がさ、言うべきことじゃ無い事はわかってるんだけど。
もう少し何とかならんのかね、君は」
「わかってる。友達として不甲斐ない」
「だからー!
いや、知世の天然さは好きだけど、こういう場合はどうかと思うって!」

あぁぁ!とリサが通る声で呻きながら頭を抱えた。
そこまで私の態度は友人として不味かったのか。
どうしよう、絶交だとか言われたら。
それはかなり辛い。