『そっか。もしかしたら知世さんも私と同じで渉ちゃんが初恋の人?』
その質問に言葉が詰まった。
鹿島さんは告白しようとしていた。
千世さんとは学生時代友達だったと言っても、二人はお互いを思い合っていたんだ。
それをこんな形で千世さんの気持ちを知った鹿島さんの顔は見られない。
そして私に突きつけられた残酷な問い。
初恋、それは違うけれど、ここまで苦しい恋は初めてだ。
その度にこの思いは本物なんだと思い知る。
だけどもう鹿島さんへのそういう思いは、彼のために押し殺すと決めたんだから。
この場合はどういう風に返した方が良いのかはわかっている。
なのにどうして、その言葉を発しようとすると声が震えそうになるのだろう。
「そうですね、もしかしたら。
でも私は小さかったので憧れに近かったかも」
やっと言葉を返せば、電話からは彼女の柔らかな笑い声がする。
それが私の心を見透かしている上で、あえて何も言わないようにしているのではと思えた。
なんとなく、同じ人を思っているからこそわかる、そういうものを感じた気がした。
肩を突かれている事に気付き横を向けば、
「聞いてくれ、今千世は幸せかって」
と、必死に私の肩を掴み鹿島さんが聞いてきて、私は頷く。
彼には私の心の機微なんて気付いては無い。
ただ千世さんの事しか頭にないのは当然なのに、こんなにも切ない気持ちにさせる。
「千世さん」
私の声に、なに?と砕けた彼女の返事が届く。
「結婚されたと聞きました。
今、お幸せに暮らしていますか?」
自然に聞いたはずだった。
なのに彼女からすぐに答えが返ってこない。
こっちは自然に聞いたつもりでも、急に知らない親戚の娘がそんな事を聞く方がおかしいのかと焦ってきた。
隣の鹿島さんも沈黙の続くスマートフォンを見たまま、戸惑った表情になっていた。
もしかして何かあるのだろうか。
これは早く千世さんへフォローすべきだ。
「実はお兄ちゃんから聞いたことがあるんです。
好きな人がいる、いつか結婚したいんだって。
いつも千世さんの話を聞いていたからそうなんだと思っていました。
なので」
話しを続けようとしたらスピーカーから、カタン、と何か倒れた音がして、千世さん?と声をかけた。
『ごめんなさい、ちょっと物を倒してしまって』
「大丈夫ですか?」
えぇ、という彼女の言葉の後、再度沈黙が流れて私は鹿島さんを見る。
鹿島さんもどう続けるべきか悩んでいるようだった。
『私ね、渉ちゃんと将来結婚するんだって心の中ではずっと思っていたの』
それは静かに千世さんから話が始まった。



