透明な君と、約束を


そうだ、ここで動揺を悟られて彼女たちを満足させたら私の負けだ。
私は鹿島さんの声で心のスイッチが切り替わる。
私は俯きそうになった顔を正面に向け、楽しげに笑みを浮かべた。

「凄い!本当にふわっふわ!」

そう言って私の胸に飛び散った泡をすくい上げ、隣の子に笑いかけた。

「さっき説明していたけどほんとだね!
これなら毛穴の汚れもしっかり落ちそう!」

そう言ってその泡を指ですくい彼女の鼻の上にちょこんと乗っけると、彼女は私の態度が予想外だったのか目を思い切り見開いて私を見ている。

彼女と友人は一連の行為に呆然としていたが、誰かの噴き出す声を皮切りに周囲から笑い声が聞こえだし、いつの間にか笑い声はスタジオ内に広がった。
それに呼応するように私も笑顔で泡を持ってはしゃぐ。

「知世ちゃん!
そのはしゃぐ感じこっちにちょうだい!」

男性カメラマンの声がして、私はわざと悪戯な笑みを浮かべる。
すると、そういうのも良いね!とカメラマンは笑って親指を立てた。
膝に転がり込んできたグッズを私はさっと拾い上げて、そのグッズと泡を手に持ち視線をカメラに向ければ大量のシャッター音。
わざと自分の顔に乗せたり、無邪気に楽しむ様子を演出する。
本来このグッズで撮影されていたのは隣の子で既に終了していたはずなのに、カメラマンは改めて私を指名してきたその意味は、私の方を使うために選んだと言うことだ。

横を向かなくても二人の機嫌が急降下していることはヒシヒシと空気感で伝わってきて、私は違う笑みを漏らしそうになるのを我慢しながらいくつもポーズを取った。