スタジオの奥にはいかにも女の子らしい部屋の一角が出来ていて、可愛い壁紙にクッション、ピンク色の丸テーブルの上には今回使うコスメやそのグッズが並ぶ。
ここに三人がカメラの方を向くように半円のように座って、順番に女子達がお勧めの商品をアピールしていく。
このリップはプチプラなのに持ちが良いとか、限定品のパウダーはパケ買いしたくなるほどの可愛さとか、実際に開けて使いながら商品のアピールと感想を言う。
もちろん話す内容は事前に教えられている。
カンペまで用意されているし、実際は写真で使われるわけだから吹き出しのようなものがついてそこに私達の言葉が載せられるわけだけど、実際は私達がここで発した言葉が使われるよりも編集部が決めた言葉が使われる場合が多い。
私の隣に座る女の子の番になり、洗顔ソープをふわふわにするグッズを試していてカメラのシャッター音が響く。
ハイ、オッケー!というスタッフの声で次は私の番だとコスメを用意しようとしたその時、バシャッと私に何かがかかった。
私の可愛いルームウェアの胸元に、白いモコモコとした泡が大量に飛び散ってたれること無くくっついている。
そして膝にはそのグッズが丸ごと転がってきた。
「きゃー!やだ!こぼしちゃったぁ!」
わざとらしい隣の子の声に、次の準備をするために近づいてきていたスタッフ達の動きが止まり顔を見合わせる。
ごめんねぇと顔の前で手を合わせ謝る彼女は、手で隠れているようでしっかりその口元が笑っていた。
隣の子も、手が滑っちゃったんだよね、滑りやすいから仕方が無いよね、などと謝る彼女の援護を必死にしていて、謝っているんだから許しなさいよ、という圧力を目で私に掛けてくる。
スタッフ達はこれがわざとだとわかっていても、よほどでは無い限りノータッチだ。
所詮は子供達のいざこざ、きっととにかくスケジュール通りに進むかどうかだけが気がかりだろう。
わかってはいるがため息が出そうなのを、スケジュールを送らせないために歯を食いしばり我慢して俯きそうになったその時、
「こういう時こそ笑え」
厳しい声が真後ろからした。
私以外の誰にも聞こえない声。
それは鹿島さんの声だった。



