透明な君と、約束を




*********


翌日の日曜日は午後から撮影。
場所は有名な撮影スタジオで、いくつもそういう大小の色々なパターンのスタジオが入っているビルだ。
私達が使っているスタジオは可愛らしい女性の部屋の枠組みが出来上がっている。
内容によりカーテンや家具を変更できたりする。
今回の撮影は友達の家でお泊まり会というのをベースに、可愛いパジャマのようなルームウェアを着ながら雑誌お勧めのプチプラコスメや面白いグッズを女の子数名で紹介していくという企画。

そしてこれまた困ったことに前回私を笑ったり嫌っている二人が一緒で、合計三人での撮影だ。
狭い控え室で二人は早々に着替え終わったのに、私物をこれ見よがしに広げてここの主のように話に花を咲かせている。
ようは邪魔だと言わんばかりの態度に私はうんざりしつつ着替えをし長い髪を一つにまとめて部屋を出て、廊下を歩いて端っこにある人のいない階段脇に場所を見つけると盛大なため息をついた。

「気乗りしてないんだな、今回の仕事」
「一緒の子達に嫌われてるんですよ。
自分に可愛げが無いからなのが悪いのもわかっているんですが、こう連続だと流石に気が重くて」

鹿島さんが目の前に現れ声をかけてきたので思わず本音を漏らす。

「へぇ、良いじゃん、それだけ知世が邪魔な存在ってことだろ。
この世界、どうでも良い奴に時間は割かないんだよ、勝手に脱落してくから。
でも上がりそうなヤツは邪魔だ。
お前はそいつらに恐れられてんだ、胸張れよ」

驚いて鹿島さんを見れば、腕を組んでニヤリと笑う。
そんな考え方、したことも無かった。

「俺に見せてくれよ、お前がこの世界で生き延びるヤツなのか」

事務所に所属したって私は所詮下っ端、個人的なマネージャーもつかない。
失敗しても落ち込んでも、全て自分で処理してきた。

それを五年前に亡くなったとはいえ同じ業界でモデルから俳優に、それも大きなドラマのメインキャストにまでなった人が側にいて私を叱咤してくれる。
胸の中が熱くなり、この期待に応えたい、そんな思いが強くなる。

「ありがとうございます、行ってきます」

私の笑みに彼はいかにもな営業用スマイルで、いえ、仕事ですからなんてふざけて返してきたので思わず噴き出せば、知らずに入っていた肩の力が自然と抜けた。