透明な君と、約束を



外で話すと私が独り言を言っているようになってしまうので、さっき来る途中にあった公園を思い出しそこまで行くと中に入り、奥にある青が色あせた平たいプラスチックのベンチに座る。
公園ではアスレチックの遊具などがあり子供達が遊んでいるが、座っているこの場所は距離があるので話しても声は聞こえることは無いだろう。
緊張して必死に喋ったせいで喉はカラカラ。
念のためと思って持参してきていた麦茶の入ったボトルを鞄から取り出すと、蓋を開けてゴクゴクと勢いよく飲めばようやくホッと出来た。

鹿島さんはここに来るまで一言も話さずただ黙っていたが、何故か周囲に人がいないのを確認すると頭をかきむしって上を向き大きな声で叫んだ。

「いやーちょぴっと覚悟してたけどさぁ!
こう現実で言われるとキッツいわ!
でもなー、千世可愛いもんな、モテてたし仕方ないよな、変な男と結婚してなきゃ良いけど」

早口でそう言うと、ばつが悪そうに私を見る。

「悪いな、こんなのに付き合わせて」
「いえ。ですがこの話を聞いただけでは成仏しないようですね」
「だよな。俺自身全然成仏しそうって感じになってないし。
やっぱ千世を直接見ないと駄目なのかなー」

流石にさっきので疲れているのに、これから千世さんの新居に突撃をする余裕は無い。
彼女の住んでいるのは隣町、ここから電車で一時間くらいかかる。
自宅からとなると往復考えて相当な時間を確保していた方が良いだろう。
こちらは本業の勉強にモデルの仕事、そして幽霊の頼み事まで加わって時間が作りにくい。
どうしようかと口に手を当て悩んでいると、

「まずは知世の学校や仕事優先しろよ。
どっかに時間できたら連れてってくれると嬉しいんだが」
「その間ずっといるんですか」

思わず嫌そうな顔をした私を彼が笑顔で頭を撫でてくる。
それはきっと妹にしているようなものなのだろう。

「ごめんな。
迷惑掛けるけど、しばらくお兄ちゃんの我が侭に付き合ってくれよ」

どうやら渉お兄ちゃんの親戚の妹であることを続行して欲しいらしい。
彼が成仏しない限り取り憑かれている私に本当の自由はない。
私はため息をつきつつ、早めにお願いしますと答えた。