透明な君と、約束を




今日も授業が終わるまで鹿島さんは学校内をうろつくからと顔を見せなかった。
下校するとき、登校前に決めていた秘密の場所に向かう。
そこは校門の隣にある建物の陰に隠れるようなところ。
既に鹿島さんが建物に寄りかかるように待っていて、もしかしてこうやって千世さんと待ち合わせしたこともあったのだろうかと、私に気付き笑顔で私を迎える鹿島さんを見て思った。

鍵を鞄から出して家のドアに挿す。
ただいまと言いながらドアを開けた。
うちは共働きでそもそも帰りが遅い日が多いのだが、今日は父親は出張、母親も残業と連絡があった。
夕食も一人が多いから鹿島さんが居てもまぁ大丈夫と言えば大丈夫だろうと思って過ごしてきて、今のところなんとかなっている。
部屋に入って制服から部屋着に着替えると、ドアを開けて自分の部屋に鹿島さんを呼んだ。
申し訳ないが家にいるときは姿を見せないように約束をして貰った。
以前お風呂場のドアを開けたときに家の廊下を歩いていた鹿島さんと鉢合わせしたことがあり、気を抜いていた私は驚いて声を上げてしまったからだ。
流石に申し訳ないのか、鹿島さんも約束を守って私が声をかけるまでは姿を消している。
その上でお風呂は覗かない、部屋も勝手に入らないで下さいとお願いした。
俺が女の子の風呂を覗くなんてことするわけないだろ!と怒られたけれど。

部屋に来た鹿島さんはずっと出会った時のままの服装だ。
私はパジャマ代わりで先日買ったばかりの可愛い柄の入ったルームウェアで出迎えた。
仕事で知ったブランドなのだが、着心地も良いし価格も学生に有り難い。
そんな私を見た鹿島さんは、そういうのが今の女子の流行?どこのブランド?と興味深そうに聞くのが、職業病が抜けてないのだろうなとわかってちょっと笑ってしまう。