結局授業が終わって帰るときになっても鹿島さんはこのクラスには現れない。
そう言えば待ち合わせとか決めてなかった。
とりあえず探そうと廊下に出てきょろきょろとしていたら、颯真に肩を揺すられた。

「どうしたんだよ」
「んー、人捜し?」
「それ、男じゃ無いよな」
「男だね、多分」

ハァ?!と颯真が声を出して私が驚いたが颯真はもっとギョッとした顔をしていた。

「なんで驚くの」
「いや、だって」

不審そうに颯真を見上げれば颯真は目を泳がせて言葉を探しているようだったが、同じ事務所の男友達が颯真の背後から現れ羽交い締めにする。
颯真は放せ!とジタバタしているが、二人が羽交い締めしているのでは逃げられないだろう。
本当に仲良いな、ここの男子達。

「知世ちゃん、もう少しうちの颯真にも優しくしてやってよ」
「男ってさ、結構さみしがりな生き物なんだ」

颯真の友人達が何故か私に向かい悲しげな顔で言ってきたので、私は眉間に皺を寄せる。
時折そういうことを彼らに言われるけれど、私としては意味が分からない。
皆と同じに仲良くしているはずなのだけれど。

「後で詳しい話聞かせろよ!」
「だから何でよ」

何でじゃねぇ!と憤る颯真を、引きずられるように友人達が連行していったのを見ていたら、どうやら少し離れた場所で成り行きを見ていたリサが腕を組んだまま私に近づいてきた。

「例の夢を叶えたいなら、もう少し人をちゃんと見た方が良いと思うんだけどねぇ」
「何でみんなして私を責めるのかがかわからない」

何ででしょうね、と両手を軽く挙げ思わせぶりに笑うリサに私はやっぱりわからないと言い、もう少し用事があるからとここで別れ廊下を歩く。
数名の生徒とすれ違いながら階段を上がり、また廊下を進む。
向かったのは二年生のクラスが並ぶ場所。
クラスを少しだけ覗きながら進むと、案の定その一つの教室に鹿島さんはいた。

教室最後尾から二つ目の席。
その机に腰掛けて窓から外を見ているようだった。
だがここは三階、その場所から窓を見たって見えるのは学校の敷地に沿って所々在る木々と学校外にある味気ないビルとかだ。

「帰りますが良いですか」

人がいないことを確認し、声をかければ鹿島さんが振り向く。
悲しげに見えた横顔は、私を見て少し口元を緩めた。