私に憑いてしまった彼は、私から見るとあまり透けてはおらず普通の人間のようだ。
歩いていれば外灯で地面に私の影は出来ているのに、隣を歩く、というか少し浮いたままで歩いている彼の影は無い。
静かな住宅街を歩いて自宅に着く。
このあたりは同時期に開発された地域で、うちの家も建て売りの戸建てで似たような家が数軒向かい合わせで並んでいる。
門にある腰ほどの扉を開け入口の門についている郵便ポストから手紙と広告を取り出し、段を三つほど上がって玄関ポーチ立つと鞄を開けて鍵を探す。
いつもどこにいったっけと鞄の中を探りながら鍵を見つけ出し、鍵を挿してドアを開けるのだがずっとぴったり横には鹿島さんが居る。

「ただいま」

玄関で声を出しながらローファーをぬぐ。
部屋の中からは誰の声もしないし、家に上がると右側にあるスイッチを押し廊下の電気をつけた。
両親は共働きで、今日の帰りは二人とも早くて十時過ぎとさっき連絡が入っていた。
自分に憑かれてしまったので仕方なく自宅に連れて来たわけだが、玄関すぐの横の階段上がった二階にある私の部屋にまですーっと入ってきて、彼は容赦なくキョロキョロと乙女の部屋を見ている。

「部屋の中にいたら着替えられないんですが!」

私の怒りに彼は、

「どうやら俺、知世から数メートルくらいしか離れられないみたいでさぁ」

と飄々と言うのでもの凄い笑顔を作ると、愛玩犬の耳が下がったような顔で壁をすり抜け廊下へ出て行った。

私から数メートルから離れられないというのは本当だろうか。
なにせこんなのは初めてだし、毎回見られているかも知れないと思いながら過ごすのはかなり苦痛だ。
早く成仏して貰わないと私のプライバシーが消える。

今日は日曜日で明日から学校。
千世さんに会うために動けるとすれば最短で週末の土曜日。
翌日日曜は夕方から撮影が入っている。
急遽予定が入らなければ最短である土曜日に千世さんへ会いに行けないだろうかと、服を着替えながら思案していた。