「はいっ! ローラン様はいつもとっても優しいです。彼がいなければ、わたくしは一人では何もできない――――怠け者のダメダメ聖女でした。この国に来たばかりの頃のわたくしは、やる気も何もかもが枯渇していましたし、寧ろ落第聖女(やくたたず)の烙印を押されたいと思っていた程で。でも、ローラン様は根気強くわたくしと向き合ってくださったから……」


 先程から何の羞恥プレイなのだろう。陛下はまるで幼子の成長を喜ぶ親戚のような、生温かい視線が俺へと向けている。


(いや、陛下は俺の叔父だけれどもっ)


 従兄弟である殿下は今や、ヒィヒィと呼吸困難に陥っていた。明らかに笑い過ぎだ。


「既に陛下もお気づきのことかと存じますが、わたくしは聖女の皮を被るのが精一杯の不束者です。この素晴らしい国の王太子妃は、とても務まりません」

「……アーシュラよ、君の気持ちはよく分かった」


 陛下はそう言った。穏やかな表情だ。