広間に残ったのはほんの数人。
 俺たち二人の他は、国王陛下とアレクサンダー殿下、それから俺の父親だけだった。


「さて、アーシュラよ。君は先程、そこにいる私の甥、ローランを『未来の夫』と公言したが……あれは元婚約者へのあてつけか……それとも君の本心か、どちらなんだい?」


 陛下は至極穏やかな声音でそう口にした。怒っているわけではなさそうで一安心だが、アーシュラ様の受け答え次第で状況は変わりうる。俺はゴクリと唾を呑んだ。


「陛下……突然あのような無礼な振る舞いをしたこと、誠に申し訳ございません。なれど、あれはわたくしの、まごうことなき本心。わたくしは、ローラン様をお慕いしています」


 アーシュラ様はきっぱりと、そう断言した。迷いなど微塵もないその瞳に、俺の心臓がドキドキと鳴り響く。こんな非常事態でも嬉しいと思うなんて、どうかしている。アーシュラ様のせいで、いつの間にか、俺の頭のネジまで緩んでしまったらしい。