その瞬間、男はカッと目を見開き、顔を真っ赤に染めた。どうやら図星らしい。恐らく、アーシュラ様を追放した責任を密かに取らされたのだろう。どうりで目の色を変えてアーシュラ様を連れ帰ろうとするはずだ。ざまぁ見ろ。


「うむ。では、それを踏まえたうえで、この男、如何しようか」


 陛下と殿下はアーシュラ様を見ていた。
 俺が知らなかっただけで、お二人はきっと、彼女の生い立ちや、この男との経緯をご存じだったのだろう。当事者であるアーシュラ様の意見をお尋ねになった。


「わたくしは――――この男をアスベナガルに帰したいと思っています」


 アーシュラ様は少しだけ迷った後、そんなことを言った。俺も含め、周りは皆、驚きを隠せない。俺はアーシュラ様に駆け寄った。


「アーシュラ様、この男はあなたを襲おうとしたのです。お咎めなしというわけにはいきません」


 本当は俺自身が刑の執行人になりたいぐらいだ。アーシュラ様を傷つけた分だけ、この男は償うべきだとそう思う。


「いえいえ。お咎め無しだなんてとんでもない。わたくしはこの男に、生き地獄を味わっていただこうと思っているんです」