「さてさて、これから王都で聖女アーシュラ様の凱旋パレードなんですっ。殿下方、きっとめちゃくちゃ注目を浴びちゃいますねぇ! 民衆の皆さんに向けた最高のスマイルの準備をお願いしますねっ」


 余程腹に据えかねていたのだろう。アーシュラ様は天使のような笑みを浮かべて猛毒を吐く。それが、一番効果的に相手にダメージを与えられる方法だと悟ったのだろう。事実、王太子は顔を真っ赤に染め、口惜し気に唇を噛んでいる。今にも血を吐きそうな形相だ。いい気味である。


「おい、ウルスラ! おまえ、こんなことしてタダじゃ……っ」


 言い返そうと口を開いたのも束の間、何かが男の口を塞いだ。まるでジッパーか何かで封をされたかのように、男の口はピタリとくっついて動かなくなる。


「あれれ? わたし、何にもしてないんですけど」


 アーシュラ様は心底不思議そうに目を丸くし、首を傾げた。神の思し召しだろうか。俺は小さく笑った。