「……どうしてこれまで教えて下さらなかったんですか?」

「え? えへへ? えへへへへへっ」


 俺の視線を避けるようにしながら、アーシュラ様は乾いた笑みを浮かべる。

 俺たちは今、王都の隣町にあるとある神殿の中にいた。
 本来ならば馬で数日掛かる距離。けれど、隣国の王太子一行を捕らえてからたったの3分足らずで、俺たちは何百キロと距離の離れたこんな場所に居る。
 当然、超人的な力が働いている。アーシュラ様だ。


「いやぁ……わたしは伝えたつもりだったんだよ! ローラン様なら当然知ってるって思ってたんだよっ! 伝えそびれてたなんてビックリだねっ」


 アーシュラ様はそう言って、わざとらしい笑みを浮かべる。嘘が下手くそだ。というか嘘と認定される前提で話している。俺はアーシュラ様の頬をグイグイ引っ張った。