(アーシュラ様……あなたはずっと、苦しんでいたんですね)


 自分は聖女でないと否定したことも、王家を厭う理由も。
 宮殿に留まらず、旅をすると決めたことも。
 どこか間の抜けた口調や暮らしぶりも――――これは素が出せるようになっただけかもしれないが――――きっと、抑圧されてきたことへの反動だ。
 この国に来てアーシュラ様は、それまでしたくてもできなかったことを行動に移していたのだと分かった。


 最早説得は無理だと悟ったのだろう。男とその従者二人は、鋭い眼差しでこちらを見ていた。
 そもそも彼等は、アーシュラ様が拒否したところで、引く気など無かったのだろう。

 恐らく隣国は、アーシュラ様を追い出したことで神の怒りを買ったのだ。そのために、あらゆる天災に見舞われている。アーシュラ様を連れ戻さなければ、神の怒りは鎮まらない。だから、是が非でも、アーシュラ様を連れ帰ろうとしているのだ。