アーシュラ様らしいセリフに俺は笑う。瞼に、頬に、何度も口付けを落として息を吐く。こんな有様で、他の女と婚約しようとしていたなんて馬鹿みたいだ。答えはとっくに分かってたっていうのに。


「――――アーシュラ様は間違いなく、聖女様ですよ。誰よりも優しく、気高く、聡明で美しい。これから先もずっと、真心を込めてお仕えしたい、唯一無二の俺の聖女様です。
だけど俺は聖女ではない、ありのままのあなたが好きです。あなたが甘えられる場所になりたい。あなたの笑顔を守りたい。――――ずっと、我慢していたのに。俺の本音を引き摺りだしたんです。嫌だって言ってももう、逃がしませんからね」


 顔を真っ赤に染めたアーシュラ様に、俺はもう一度キスをした。胸いっぱいに愛しさが広がる。甘くて温かな幸福感だ。

 神に愛された聖女。禁忌を犯さなければ手に入らない禁断の果実。それが手に入るなら、他には何も要らない。聖人君子なんて糞喰らえだと、そう思った。