(うーーん、またか)


 俺は一枚の手紙を手に、密かに頭を抱えていた。ここ最近、頻繁に届くようになったそれは、両親から俺に宛てられたものだ。


(どうしたものか)


 自分でも両親の言い分が正しいことは分かっている。分かっているが、どうにも踏み切ることが出来ない。頭の中にアーシュラ様の笑顔がチラつく。ため息が漏れた。


「ローラン様、ご飯食べに行きましょっ」


 その時、ノックもなしに部屋のドアが開く。アーシュラ様だ。俺は小さく嘆息した。


「アーシュラ様、ノックぐらいしてくださいと、前にもお伝えしたでしょう?」


 反射的に手紙を持った手を後に隠し、俺は平常心を装った。


「えーー? わたしとローラン様の仲なのにぃ」


 ケラケラと笑いつつ、アーシュラ様は俺を撫でる。久々の犬扱い。ついつい唇が尖った。