「え? ……え? そんな馬鹿な。だって、わたしが聖女だって証拠はただの胡散臭い預言書だけでしょ? そんな、ハッキリ分かるなんてことは……」

「――――王宮には聖女の魔力にのみ反応する秘宝がありましてね」


 その瞬間、ヒュッと息を呑む音とともに、アーシュラ様のジェラートがポトリと地面に落ちた。勿体ないと思いつつ、ベタベタになったアーシュラ様の手を拭ってやる。


「アーシュラ様、やっぱりあなたが聖女でいらっしゃいますね?」


 尋ねつつ、俺は確信に満ちていた。
 恐らく、アーシュラ様は王宮に連れて行かれたとしても、聖女の力を示さぬ限り、しらを切り通せると思っていたのだろう。だから今、予想外の真実を知って戸惑っている。明らかに挙動不審に陥っていた。


「なんで……なんで最初に教えてくれなかったんですかっ?」

「教えたら、あなたは逃げ出すでしょう? 大体、秘宝のことはトップシークレットですし、おいそれと口に出せるわけがありません! 俺にはあなたを王宮にお連れする義務があるんです。大人しく付いてきてください」