本当ならばこれは、国がすべきことだ。
 けれどこれまで、俺たちは困っている民がいることに気づきもせず、彼等に対して何もしてこなかった。ここから先はアーシュラ様じゃない――――俺の仕事だ。


「――――陛下に手紙を書きます」


 それだけで、俺が彼女の想いを理解したこと、これから何をしようとしているのか分かったのだろう。アーシュラ様は満足気に微笑み、俺の手を握った。


「ローラン様が一緒に居てくれて良かったですっ」


 アーシュラ様はそう言って微笑んだ。ちゃらけた口調だが、それが彼女の本心だって今ならわかる。


(俺も……)


 そう口にしかけて、俺は必死に口を噤んだ。胸がポカポカと温かい。心臓がドキドキと鳴り響いていた。