「聖女は君子じゃなかったのか?」


 ついついそんなことを呟いてしまう程、俺の心は荒んでいた。


(だって、普通に考えたらそうだろう?)


 聖女っていうのは人格的にも優れていて、高潔な人物だって相場が決まっている。こんな風にナチュラルに人を振り回す人物である筈がない。寧ろ、人々を救済へと導いていくべき存在の筈なのに。


「だからーー、最初から言っているじゃありませんか。そもそも、わたしなんかが聖女なはず無いでしょう?」


 俺の蚊の鳴くような呟きを見事に拾い上げ、アーシュラ様は実に楽しそうに笑っている。


「――――それについては王宮に行けばハッキリわかる」

「え?」


 想定外の返答だったのだろう。アーシュラ様は途端に顔を引き攣らせた。