アーシュラ様は、俺には見えない重荷を背負って生きているのかもしれない。聖女皆が抱える業なのか、はたまたそれとは別の何かなのか。
 分からない。
 けれど、俺が世話を焼くことでそれが少しでも軽くなるなら、悪くはないと思ってしまったのだ。


「力のない領主の元に暮らす領民が気の毒です。こんな小さな子どもだもの。本当だったらとっくの昔に保護されて良い筈なのに」

「…………だからアーシュラ様は、領主やその土地の有力者から先にお会いになるんですね」

「えっ?」


 ポツリと漏らしたひとりごとに、アーシュラ様はほんのりと目を丸くして応酬する。

 領主に会えば、その土地の状況が見えてくる。今回のように、領主の統治能力や資力が衰えている場合、それは領民の生活にまで影響する。
 困った人間の声を届ける場所がない。支援の手が差し伸べられなくなる。人々の心が荒み、窃盗や詐欺などの犯罪も横行する。後はもう、負の無限ループだ。


「仮にも王家と血の繋がりがあるというのに、俺はこれまで、そういうことに無頓着でした。……すみません」