アーシュラ様は意識の戻った子どもを宿へと連れ帰った。その子に帰る家がないからだ。親を病で亡くし、頼れる人も助けてくれる人も周りにおらず、町中を彷徨いながら食糧を調達していたのだという。


「国は貴族の――――領主たちの状況をちゃんと確認してるんですかねっ?」


 子どもの身体を綺麗に拭ってやりながら、アーシュラ様は唇を尖らせる。


「いや……どうだろう」


 普段は世話を焼かれる側だというのに、今日のアーシュラ様は寧ろ甲斐甲斐しく世話を焼いている。アーシュラ様はきっと、典型的な『やればできるけど、やらない』タイプなのだろう。


(もしかすると、俺はアーシュラ様を甘やかしていることになるんだろうか)


 だけど、それで良い――――そんな風に考えている自分がいる。