『アーシュラ様は王族がお嫌いなんですか?』

『うん。あんまり好きじゃないねっ』


 アーシュラ様は躊躇いなくそう答える。俺は少しだけ眉根を寄せた。


『あっ、でもでも! ローラン様のことは好きですよ。一緒にいるとなんか落ち着くし』

『……俺、王族だと名乗った覚えはありませんが』


 俺の返答に、アーシュラ様はふふ、と笑う。


『だーかーらー、聖女の力を舐めるなってんですよ! そういうのは、神の力って奴でちょちょっと調べられるもんで……』

『とか何とか言って、本当は殿下に聞いたんでしょう?』

『…………バレたか』


 満面の笑みを浮かべ、アーシュラ様は身を乗り出した。満足気なその表情に、なんでか俺の心も満たされる。


『血の繋がりがあるってだけですよ。俺はしがない公爵令息です』

『うん。わたしもローラン様はローラン様だって思ってます!』


 アーシュラ様はそう言って穏やかに目を細める。

 だけど、良かったのはそこまで。その後はずっと、アーシュラ様の愚痴地獄に苦しめられることになった。