「もう少しゆっくりして行ったらどうだ? 俺ともまだ、十分に交流が深められていないだろう?」

「まぁ……! そんなことはございません。国中の乙女の憧れ……殿下と、一度でもお茶が出来たのです。もう十分――――光栄ですし、幸せですわ」


 アーシュラ様は口元に手を当て、上品に笑う。


(本当に外面が宜しいことで)


 心の中でこっそりと悪態を吐く。と、いうのも、殿下主催のお茶会の後、アーシュラ様から散々愚痴を聞かされていたからだ。


***


『王族ってのはどうしてあんな、自慢にもならない自慢話を堂々とできるんですかネ?』


 気だるげにソファへ腰掛けつつ、アーシュラ様が口にする。思わぬ言葉に、俺は眉間に皺を寄せた。


『ちょっ! そんなこと、王宮内で口にしたら――――』

『平気平気! 聖女の魔力舐めんなってんですよ! そこらへんはちゃんと対策取ってますーー』


 アーシュラ様はそう言って身を乗り出し、屈託のない笑みを浮かべる。
 俺は聖女の能力について詳しくない。が、以前本人が言っていたように、割と色んなものを自在に操れるらしい。