「……ローラン様、わたし、あの人苦手です」


 殿下の後姿を見送りつつ、アーシュラ様がポツリと漏らす。


「おい、誰が聞いているか分からないんだぞ」

「そりゃぁ分かってますけど。でもでも、ああいうキラキラしい人は一緒に居て疲れます」

「…………アーシュラ様も、見た目だけはそんな感じですけどね」


 俺の言葉にアーシュラ様はキョトンと目を丸くする。それから、クスクスと楽しそうに笑い声を上げた。
 殿下に向けていた作り笑いとは違う、自然な笑み。邪気のない可憐な姿は、まるで妖精のようだ。いつもそうやっていればいいのにと思わずにはいられない。


「因みにわたしは、ローラン様と一緒に居ると、すっごく落ち着きます」

「――――それ、どういう意味ですか?」

「えぇーー? そのまんまの意味ですよっ」


 悪戯っぽい笑みを浮かべ、アーシュラ様は俺の真っ黒な髪の毛を撫でつける。


(……どうせ俺はキラキラしてないですよ)


 心の中で憎まれ口を叩きながら、俺は小さく笑うのだった。