(アーシュラ様ならご自分で何とかできそうだが)


 十七歳という年齢の割に、アーシュラ様は処世術に長けている。先程殿下も口にしていたが、堂々とした受け答えや絶妙な距離の取り方。本当に平民だったか不思議な程だ。

 けれど、今回は知り合ったばかりの王太子殿下が相手だから分が悪い。アーシュラ様自身で断ると角が立つのも確かだ。俺はこっそりとため息を吐いた。


「殿下――――恐れながらアーシュラ様は、長旅の疲れが出ていらっしゃいます。さすがに今から、殿下のお相手をするのは難しいかと」


 このままではきっと埒が明かない。そう思った俺は、殿下が不快にならない程度に助け舟を出す。世話役を仰せつかった以上、面倒でも腹を括るしかない。


「そうか? リラックスできると評判の茶に、美味い菓子を用意させるんだが」


 とはいえ、殿下も簡単には引き下がらなかった。絶妙に断りづらい提案を加え、再度アーシュラ様に微笑みかける。