「いやぁ、上手くいきましたねぇ」

「――――何が上手くいきました、だ」


 ウキウキと大手を振って歩くアーシュラ様に向かい、不機嫌な声を浴びせかける。人の気も知らないで、実に満足気な笑顔。本当に、天使のような顔をした悪魔のような少女だ。


「まあまあ、そんな怖い顔をしないで」

「誰のせいだと思ってるんですか」


 溜息を一つ、前に向かって歩を進める。
 王宮を飛び出し、国内を旅する許可が出たものの、さすがに数日間は王都に滞在しなければならない。王都の中にも聖女の力を必要とする人々がいるし、今代の聖女の力を見定めたいという王家の意向だ。

 そんなわけで俺は今、アーシュラ様が不便をしないよう、王宮を一頻り案内させられている。非常に面倒な役回りだ。