「――――はい。わたくしは常々、一部の人間だけが何かの恩恵を賜る機会を得ることに、疑問を抱いていました。
わたくしのこの力があれば、病を癒せます。飢えを満たせます。土地を浄化し、作物が育つようにすることも、大地を動かすことも意のままにできます。
けれど、わたくしが一所に留まれば、聖なる力の恩恵はわたくしの近くにいる方――――極端に言えば王都の方にしか、届けることができません。
わたくしは神に力を分け与えられし者。出来る限り多くの方に、神を感じる機会、救済の機会を得ていただくべきだと思うのです」


 流れるような口上。俺は、開いた口が塞がらなかった。
 あのアーシュラ様が。あのぐーたら我儘アーシュラ様が!聖女っぽいことを口にしている。なんなら君子っぽいことまで口にしている!こんなことがあって良いのだろうか?正直言って詐欺だと思う。


「ですから、わたくしはしばらく国内を旅して回りたいのです。そして、沢山の人々と会い、その苦しみに寄り添いたい。……王宮に入るのは、それからでも遅くはないと存じます。もちろん、国のために、毎日祈りは欠かしませんわ」

「ふぅむ」