「それで、ローラン様はどうしてお姉さまの所に?」

「これを受け取りに行っていたんですよ。アーシュラ様にプレゼントしようと思って」


 ローラン様はそう言って、小さなボトルを取り出す。中身は淡黄色の液体だ。開けたら、ほのかに優しい香りが漂った。


「これは……」

「アーシュラ様の落ち込みようを見て、余程香水が欲しかったんだろうと。だったら、アーシュラ様に似合うものをと思って、取り寄せてもらっていたんです。
姉はあんな感じの人だから、アーシュラ様に会わせる前にきちんと釘を刺しておきたかったし。せっかく贈り物をするんです。喜んで欲しいと思うでしょう。驚かせたかったから、ああしてこっそり受け取りに行ったんですが」


 照れくさそうに話すローラン様。愛おしさが一気に込み上げてくる。


「ローラン様……やっぱりわたし、待ちきれません! 今すぐ籍を入れましょう!」


 なぁんて、冗談。絶対『無理に決まってるでしょう』って言われると思っていたんだけど――――


「良いですね……そうしましょうか?」


 はにかむ様に微笑まれて、撃沈。
 わたしは見事に返り討ちにあったのだった。