「それで? アーシュラ様はどうして俺の後をつけたんですか?」


 意地が悪い。普段の仕返しとばかりに、ローラン様はニヤリと口角を上げている。


「だって……だってぇ~~~~~~」

「全く。俺があなた以外の人を愛する筈が無いでしょう?」


 ローラン様はそう言って、わたしのことをこれでもかという程抱き締めてくれた。温かい。温かくて落ち着く。ローラン様の鼓動は、わたしと同じかそれ以上に早い。


「別に、愛情を疑っていたわけじゃありません」


 だからこそ、ローラン様がお姉さまに抱き締められているところを見て、とてつもなくショックだった。彼の愛情はわたしだけのものなのに、って。収まっていた涙がまた、ポロポロと零れ始める。


「だったらどうして……」

「だって、ローラン様ったら、わたしの誘いにちっとも乗ってくれないじゃありませんか!」


 言えば、ローラン様は目を丸くし、顔を真っ赤に染め上げた。
 これまでよりもずっとずっと、鼓動が早い。心なしか体温も上がったようだった。
 ローラン様は何度か口を開け閉めした後、とてつもなく深いため息を吐く。それからわたしをじっと見つめ、身体が軋むほどに抱き締めた。