「会いたかったわ、ローラン!」


 そう言って女性は、ローラン様の頬に口付ける。あまりのショックに唇が戦慄いた。


「ちょ! そういうのは要らないって」

「良いじゃない! 私とあなたの仲だもの! それにしても久しぶりね! 本当に会いたかったわ」

「それより、頼んでいたものはちゃんと準備して――――」

「ローラン様の浮気者!」


 気がついたら、身体が勝手に動いていた。姿を現わし、ローラン様を美女から引き剥がして、無理やりわたしの方を振り向かせる。


「アーシュラ様!?」


 ローラン様は目を丸くし、わたしのことを見つめていた。まるで幽霊でも見るかのような表情。腹立たしさに涙が溢れそうになる。


「嫌です! その人と浮気しちゃダメ! ローラン様が愛して良いのはわたしだけですもの! ダメなところがあるなら、ちゃんと直します! 片付けも……頑張ってします。出来る限り努力しますから……わたしを置いて行かないでください!」


 声を上げながら、胸が苦しくなる。
 それは、前の婚約者の時には知らなかった想い。

 だってわたしは、ローラン様を誰にも奪われたくない。絶対絶対、逃したくない。わたしの側に居て、わたしだけを愛してもらいたい。もしも心変わりされても、絶対、地の果てまで追うって決めてるんだから。