アーシュラ様は紛れもなく聖女だ。そして、聖人君子という言葉の良く似合う、素晴らしい御方だと思う。生涯に渡ってお仕えし、守り、幸せにしたい、唯一無二の女性だ。


「――――何を言ってるんですかっ。わたし程利己的な人間は他にいません! こんなの全部、自分のためですよ? だって、少しぐらいは悠々自適の貴婦人ライフを送りたいじゃないですかっ。ローラン様と思う存分ラブラブしたいし、イチャイチャしたいし、他にもたくさん、やりたいことが……」


 愛しさのあまり唇を塞げば、アーシュラ様は嬉しそうに目を細める。俺の頬を両手で挟みこみ、もっともっととキスを強請った。


(本当に、欲張りな人だ)


 けれど、そんなアーシュラ様が俺は好きだ。これから先もずっと、今のアーシュラ様のままでいてほしいと、そう思う。


「全部、一緒に叶えましょう」


 俺はそう言って、アーシュラ様を抱き締めた。聖女としての夢も、女の子としての夢も、諦める必要なんてない。全部全部、俺と叶えていけば良い。


「はい!」


 アーシュラ様の返事が、アスベナガルの空に木霊する。太陽みたいなアーシュラ様の笑顔に、俺は目を細めたのだった。