「ほらよ」


先に部屋に入った男が、玄関で立ち尽くすあたしに鍵を持ってきて差し出す。


「え…」


「ないと不便なんだろ。日中勝手に出入りしたらいい」


差し出された鍵を受け取って手のひらに乗せ、それをジッと眺めた。

男の足音が遠のく。


「あのっ……」


慌てて声を掛けると男が振り返った。


「何だ」


「……あり…がと…」


お礼なんて普段言わないから、恥ずかしくなって少し口ごもる。


「そんなとこに突っ立ってないで、さっさと中に入ってこい」


男の言葉に、靴を脱いで部屋の中に入った。