「杏里紗、聞こえない」


顔を上向かせ、おでこにキスを落とした。


「……透のこと…それぐらいじゃ嫌いになれないもん…」


潤んだ瞳で俺を見上げる。

杏里紗と向かい合わせになると、よくこういう状態になっている気がする。


あー、くそ。

可愛いな。


「俺は杏里紗が居ればそれでいい」


ここに人が居なけりゃ、今すぐにでも押し倒したい気分だ。


「はいはい、ごちそーさまです」


戸田が合図するかのように両手をパンパン叩いた。


「お二人とも、素敵な関係ですね!」


岡本が感心したように何度も頷いている。