「結婚パーティーに行く準備、しようか」


「ん」


杏里紗の背中に触れ促す。


「杏里紗」


頬に手を添え名前を呼ぶと、上目遣いのまま俺を見上げた。

その唇にそっとキスを落とす。


「ね…」


「ん?」


「お母さんも参加……するんだよね…」


「うん」


「……ありがと」


俺のフロックコートを掴み、潤んだ目で見上げる。

その姿が堪らなく愛おしくて。

こんな格好じゃなければ、そのままこの場で思い切り抱き締めたのに。