(つまず)かないよう透に(もた)れないよう、少しずつ歩を進めていく。

つい下を向きたくなる気持ちを抑え、顔を上げた。

両側から向けられるビデオやスマホ達。

そんなものを認識するほどの余裕はあるみたいだ。

そして中ほどまで来た時、突然あたしの思考回路が止まった。


「え……」


思わず声が出る。


何で──…。


両方の目から涙があふれ出した。


お母……さん…。


真っ赤な目をしてあたしを見ているのは、紛れもないあたしの母親だ。

立ち止まってしまったあたしを促すように、透が腕であたしの手を引いた。

それでも、何も考えられなくなってしまって涙で前が見えなくなる。