『あたし一人のために結婚式なんてしなくていいのに…』


『杏里紗は結婚式したくないのか?』


そう聞かれてすぐに『したくない』とは言い出せなかった。

したくないわけじゃない。

ただ、誰からも祝福されるわけでもないのに、透の親族を巻き込んで大きな式をすることに少し抵抗があっただけだ。


でも──…。


『俺が、杏里紗のウエディングドレス姿見たい』


そう言われてしまったら断れるわけはなくて。

忙しかったけれど、衣装を選ぶのも楽しかったし、今更だけど結婚したんだな、って…じわじわと実感する毎日だった。


今日……本当に結婚するんだ…。