「すっげードキドキしてるじゃん」


肩に乗せられる顎。


「やっ…」


全身が過敏になっているのか、お湯のパチャッという音にすら体が反応してしまう。


「ホント、杏里紗ってスレてるかと思えばめちゃくちゃ純粋なところもあるよな」


「それどーゆー意味っ!」


勢いよく振り返ったら、フッと笑われた。

お互いの距離が近くて。

あたし達が動くたび、波打つ湯面(ゆおもて)と耳に響くお湯の音。

湿気のせいでしっとりしているからか、触れる唇もいつもより瑞々(みずみず)しい。


「せっかくの絶景なのに、全然景色見てないな」


悪戯っぽく笑う透に、ただ照れることしかできなかった。