「ちょっとだけ前に行ける?」


浴槽に(もた)れていたら、縁に置かれた透の手が背中に当たった。

緊張で跳ねる心臓。


「ん…」


口までお湯に潜り、膝を抱えて小さくなる。


「ちょっとでいいって言っただろ」


腰を下ろした透が背後からあたしを抱え上げ、膝の上に乗せた。


ひっ、引っ付いてるっ!


あたしの背中もお尻も膝の裏も。

背中側全部が透に触れている。

腰に両手を回されているから身動きも取れない。


ヤ…ヤバい…。

頭から湯気が出そう…。


恥ずかしくて、心臓があり得ないぐらいバクバク鳴っているのが分かった。